factorioから学ぶエネルギー問題

2023/07/21

Game

t f B! P L

今年初めに書いて下書きのまんまになってたやつを今頃上げてみる…。

昨年秋に「factorio」がNintendo Switchでリリースされた。PC版は2016年にリリースなので、6年もののゲームが移植されたことになる。(2016年はあくまで早期アクセスでのリリースで、正式リリースは2020年らしいが。)

Factorioは無限に広がる2D世界に自動化された工場を建設し、次第に複雑になる様々なアイテムを製造するゲームです――想像力を駆使して工場をデザインしましょう。単純な要素を組みあわせ、精巧なラインを作りましょう。そしてあなたを敵視する生物から工場を守りましょう。
任天堂の公式オンラインストア。「Factorio ダウンロード版」の販売ページ。マイニンテンドーストアではNintendo Switch(スイッチ)やゲームソフト、ストア限定、オリジナルの商品を販売しています。

そんな古いゲームが今更移植されるということは、それほどおもしろいということだ。PC版ユーザーの多くがSwitchユーザーに対して「このゲームはヤバい」と警告のツイートやコメントしていたが、自分も同感だ。一時期は土日がほぼこれで潰れていたし、平日も深夜までやっていた。時間があっという間に溶けていくのである。

ゲームの概要

「とある惑星に不時着したプレイヤーは、手元にある数少ない資源を基に、最終的にロケットを作って打ち上げることを目的に活動する。」が、おおまかなこのゲームの内容。
ロケットの作成には莫大な資源と高度な加工技術が必要となるが、最初持っている資源はほんの少ししかないし、部品の加工技術もあまり持ち合わせていない。そこで、周辺の資源(木、石炭、銅鉱石、鉄鉱石など)を取得して、それを加工して部品を作っていく。加工技術は研究施設を作って研究を行い、レシピを獲得していく。多くの作業は手動でも可能だが、作業量が膨大になるので、1人が人力で行うことは事実上不可能。そこで、資源採取や部品加工の作業を、機械を使って自動化していく。
これだけなら簡単なのだが、機械を使用すると、それ相応に"汚染"が進んでいく。この汚染が惑星の原住民(といっても虫みたいな形状の生き物)のコロニーに到達すると、原住民は怒りを露わにし、汚染源を破壊しようとプレイヤーや工場を襲撃してくるようになる。そこで、この襲撃を防ぐための防御壁や、原住民を倒すための武器も作成しなければならない。

勝手に他人の惑星にやってきたくせに、そこの資源を奪い取り、汚染も広め、さらには原住民を虐殺する、なんと酷いゲームwww との話は一旦置いといて、ここではエネルギーに関することだけを取り上げたい。

部品加工の材料

部品を作るためには、当然材料が必要になる。

まずは各種部品を作るための基本となる材料・鉄や銅を精製しなければならない。この惑星は鉄鉱石や銅鉱石が都合よくw露出しているので、まずはそれらを採掘する。そうして得た鉱石を炉にぶち込み、鉄板や銅板を精製する。
そして、これらを加工して色々な部品を作っていく。まずは一次部品となる歯車や銅線を作り、その後、鉄板と歯車からベルトコンベアーを、鉄板と銅線から電子基板を、とのように、部品を組み合わせて新たな部品を作っていき、最終的にはロケットを作って打ち上げるわけである。

部品加工の多くは手動でも行うこともできるが、歯車や銅線などの一次部品は大量に必要となるため、手動では時間も手間もかかる。さらには手動では作成できない部品もあるので、部品加工を自動で行う組立機を作り、ベルトコンベアーやロボットなどを使って組立機の間をつなぎ、どんどんと生産ラインを広げていく。

これがこのゲームの一番の肝であり、おもしろいところになる。一次部品は大量生産が必要で、効率の良いラインを作っていくことになる。どういうラインを作るかが、各個人のセンスが問われるところ。答えは1つではない。

部品加工のエネルギー

さて、ここからが本題。

部品を生産するためには、炉や組立機を使うが、それらを動かすには当然ながらエネルギーが必要だ。

鉄や銅を精製する炉を使うには、燃料が必要になる。まずはその辺の木を切って使うのが簡単だが、燃焼時間が短く、また、この世界にはなぜか木を伐採する機械が存在しないため、すべて自分の手で集めるしかなく、非常に効率が悪い。そこで、これまた都合よく露出している石炭を掘って使うことになる。
しばらくゲームを進めていると、またまた都合よく露出している油田が見つかるので、石油を利用できるようになる。原油やそこから精製した重油・軽油を直接燃やすことはなぜかできないが、それらから固形燃料を作成することで、燃料として利用可能となる。

部品を生産する組立機を動かすには、電力が必要になる。そのためには、ボイラーでお湯を沸かして蒸気機関を動かして発電、つまり火力発電を行わなければならない。そして、ボイラーを動かすには燃料が必要となり、炉のときと同様に燃料を燃やすことになる。

進む汚染

つまり、このゲームでエネルギーを得るためには、木なり石炭なり石油(から作った固形燃料)なりを燃やすしかない。モノを燃やせば当然何かが排出されますわね。これによって汚染が拡がっていく。
組立機や掘削機などが動作すること自体でも汚染は発生するが、新たな部品を作るためには歯車や銅線などの基礎的な部品が大量に必要となので、組立機はどんどん数が増えていくし、そのためには基本となる鉄板や銅板を精製する必要があるので、炉も大量に必要とあり、さらにはその原料となる鉄鉱石や銅鉱石の採掘のために、大量の採掘機を設置することになるので、汚染は拡がる一方だ。
それに合わせて使用するエネルギーも増えていくので、エネルギーを得るために燃やすモノが増えて汚染が拡がり、...と汚染拡大は留まるところを知らない。

ゲーム内では明確な説明はないが、汚染は基本的にはどんどん外側に拡がっていく感じで、森があるとその拡がりが多少軽減されるので、大気汚染がイメージされているものと思われる。

前述のように、汚染は原住民襲撃のトリガーとなるので、できるだけ抑えられた方が良いのだが、そう簡単にはいかないので、原住民の襲撃は増え、段々と強力になっていく。しかし、こちらも目的達成のためには工場を守らないといけないので、原住民を撃ち殺すか焼き殺すかするしかない。改めて、酷い話やで…。

汚染の拡大を防ぎたいが…

強力な武器を大量に作って周辺の原住民を殲滅してしまえば、汚染のことなど気にしなくてもよいのだがw、こちらにも情けはあるので、できるだけ汚染の拡大を防いでやろうではないかと。

一番の汚染源は、鉄や銅を精製する炉。序盤に使う石の炉や、中盤で大量に使うことになる鋼鉄の炉は、燃料を直接燃やすので、ものすごく汚染が進む。
そこで登場するのが電気炉。これだと石の炉の1/2、鋼鉄の炉の1/4の汚染しか発生しないし、精製速度は鋼鉄の炉と変わらないので、電気炉に置き換えると、かなり汚染が抑えられる。

しかし、燃料から電気にエネルギー源が変わるので、当然ながら大量の電力が必要となる。そのためには発電所を増やすしかないのだが、発電所を動かすにはやはり燃料が必要。つまり、炉からの汚染を抑えようとすると、今度は発電所からの汚染が増える。結局汚染の拡大は抑えることはできない。

新たな発電方法1

発電のためには火力発電が必要と前述したが、研究が進むと違う発電方法が得られる。その1つが太陽光発電だ。

太陽光発電は非常にクリーンな発電だ。燃料が必要ない、つまり、汚染が発生しない。これに置き換えると汚染は劇的に減ることになることは明白だ。ソーラーパネルの製造コスト(製造のための資源量)が少し高めだが、それでも総合的な汚染量は減らせるだろう。
燃料は不要だが、代わりに太陽光が必要だ。つまり、昼間しか発電ができない。しかし、蓄電池を用意しておけば、夜も電力を供給できるようになるので、ソーラーパネルと合わせて設置しておきたい。この世界には雨や季節がないので、地球と違って発電量が計算できる、つまり安定供給ができるのは大きい。

しかし、火力発電に比べて圧倒的に発電量が少ないのがネックになる。
ソーラーパネル1個の発電量は、前述の火力発電に使う蒸気機関1個の1/20、面積当たりで計算しても1/10しかない。なので、火力発電をすべて太陽光発電に置き換えるためには、発電量の単純計算で10倍、さらには夜間の分も昼間に発電しないといけないので2倍、つまり20倍の土地を確保しなくてはならない。さらに、夜間の電力供給のためには蓄電池の設置も必要で、そうなるとさらに土地が必要となる。

新たな発電方法2

もう1つの発電方法は原子力発電だ。

原子力発電は圧倒的な発電量が魅力だ。基本的な仕組みは火力発電と同じ方法だが、扱う熱量が大きいため、タービンの発電量は前述の火力発電の約6.5倍となる。
この惑星はウラン鉱石も都合よくw露出しているので、それを採掘してゴニョゴニョして燃料棒を作成し、原子炉に突っ込めばよい。
原子炉や熱交換器は汚染を発生させないので、こちらもかなりクリーンな発電と言える。この世界には放射能もないようなので、そこまで慎重な扱いをしなくてもよいのも大きい。

しかし、原住民の襲撃にあったりして破壊されると、その周辺の施設も巻き込まれて破壊されてしまうので、絶対に襲わないようにしなければならない。

リアル世界に似ている

リアル世界では今起こっていることは、「汚染の拡大を防ぎたいが…」の項で書いたことと同じだ。"炉"を"自動車"に置き換えて読んでもらえばわかるだろう。
電気自動車は確かにクリーンだが、それが充電している先の発電所からはバンバン煙が出ている、なんて風刺画を見たことあるが、本当にそのとおりのことがこんなゲームの世界でも起こるのである。

そして、その解決策として、「新たな発電方法」の2つの項で書いたものが今注目されているが、太陽光発電については、安定した気象のゲーム内世界でも相当な広さの発電所がないといけないのに、曇れば発電できない、パネルの寿命がある、そんなリアル世界で大丈夫なのかと。最近は、反射光による被害とか土砂崩れなど太陽光パネルの設置に関するトラブルも各地で起きているし、山一面がパネルに覆われるなど景観の問題も発生している。
一方で原子力発電は、ゲーム内ではかなり低リスクだが、自然災害もあるリアル世界ではやはり危険とのイメージが大きい。莫大なエネルギーが得られる代わりに、制御を間違うと大変なことになる。また、このゲームでは廃棄物は完全リサイクルできるが、リアル世界ではそうはいかない。

…なんてことをこのゲームをやってて思った次第。
自分的には正直「石炭バンバン燃やせばええやん」と思っているのだが、現実解としては、空冷で賄える小型原発が一番いいんじゃないかと。少なくとも太陽光発電は土地の狭い日本ではどうにもならないと思っている。日本を全部ハゲ山にしてしまえば賄えるかも?だが。

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